小規模企業共済は事業主が死亡した後も継続可能。承継通算のメリット

ポイント:契約者である個人事業主が死亡しても、配偶者または子どもが事業を承継すれば契約を継続することが可能。相続税の計算上は死亡退職金の非課税枠を使える。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

個人事業主や小規模な会社の役員が、節税や退職金積立といった目的で加入することの多い小規模企業共済。

一般的には、事業を廃業したときや亡くなったときに共済金を受け取ることになりますが、事業の全部を配偶者や子どもが承継した場合、共済契約をそのまま引き継ぐことができるのをご存知でしょうか?

今回は、小規模企業共済契約の「承継通算」制度について解説します。

小規模企業共済制度とは

小規模企業共済とは、個人事業主や小規模な会社の経営者のための退職金制度で、国の機関である独立行政法人・中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

掛金月額は1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に設定することが可能です。

個人事業の廃業時や会社役員の退任時には契約者本人が共済金を受け取ってリタイア後の生活資金に充てることができるほか、契約者が亡くなったときは遺族が共済金を受け取ることもできます。

また中途解約した場合には、掛金納付月数が12ヵ月未満の場合は掛捨てとなりますが、12ヵ月以上になると最低でも80%、以降は掛金納付月数に応じて段階的に返戻率が上昇し、240ヵ月(20年)までいくと100%、最高で120%が戻ってきます。

小規模企業共済の節税効果

小規模企業共済の魅力は、何といっても高い節税効果を発揮することです。

節税効果①・掛金納付時

まず、掛金を納付した時には掛金の全額が所得から控除されますので、掛金に所得税率・住民税率を乗じた分だけ節税になります。

<具体例>

  • 掛金月額7万円(年間84万円)
  • 課税所得2,000万円

①所得税の節税額  840,000円 × 40% = 336,000円

②住民税の節税額  840,000円 × 10% = 84,000円

③節税額合計  ① + ② = 420,000円

上記のケースでは84万円を掛けて42万円の節税効果が得られることから、実質的な掛金負担は42万円で済んでいることになります。

同じような積立制度として生命保険会社の個人年金がありますが、こちらは保険料をいくら掛けたとしても最高で年間4万円(旧契約では5万円)しか控除されませんので、小規模企業共済の節税効果の高さがお分かりいただけるかと思います。

節税効果②・共済金受取時

小規模企業共済は、共済金の受取時にも税金が優遇されています。

共済金の受取方法には「一括受取」、「分割受取」及び「一括・分割の併用」の3種類があります。

死亡以外の事由による「一括受取」の場合には、税務上『退職所得』という扱いになりますので、勤続年数(共済加入期間)に応じた退職所得控除を受けることができ、税負担が軽減されます。

死亡による遺族の「一括受取」の場合には、税務上『死亡退職金』として扱われ相続税の課税対象になりますが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使うことができます。

また「分割受取」の場合には、税務上『雑所得(公的年金等)』という扱いになりますので、国民年金や厚生年金といった公的年金と同様、公的年金等控除を受けることができ、税負担が軽減されます。

承継通算制度とは

概要

事業の廃止や契約者の死亡といった共済金の請求事由が生じた場合でも、以下のようなケースでは、共済金の支給を受けずに、それまでの掛金納付月数を通算して共済契約を継続することができます。

  • 個人事業の全部を譲り受けた場合
  • 個人事業主の死亡により、その事業の全部を相続した場合

これを「承継通算」といい、旧契約者の配偶者または子どもに限って1回のみ通算することが可能です。

承継通算を行うためには、共済金の請求事由が生じてから1年以内に中小機構へ申し出て手続きを行う必要があります。

なお、事業の全部を引き継ぐことが条件ですので、たとえば賃貸物件を複数所有している不動産オーナーが亡くなった場合には、一人の相続人が全物件を相続しなければ承継通算はできません。

承継通算を行った場合の相続税の取扱い

契約者の死亡により遺族が一時金として共済金を受け取った場合、『死亡退職金』という”みなし相続財産”扱いとなり「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えますが、掛金の承継通算を行った場合も同様に死亡退職金の非課税枠を使うことが可能です。

承継通算を行った場合の相続税評価額は「一時金を請求した場合に受け取ることができる金額」となりますが、ここから「500万円×法定相続人の数」を控除した金額が相続税の課税対象となります。

つまり、一時金として受け取ったとしても承継通算を行ったとしても、相続税上の取扱いは同じということです。

承継通算を行うメリット

承継通算を行うメリットが生じるのは、主に個人事業主の死亡により配偶者または子どもが事業を承継するケースです。

受給権者が事業を相続する場合

共済金の受給権者が事業を相続する場合、もし自らも小規模企業共済への加入を考えているのであれば、承継通算により契約を継続した方が有利です。

というのも、小規模企業共済は掛金納付期間が長ければ長いほど共済金の支給率も上がるため、一旦共済金を受け取ってから新規で加入するよりも承継通算を行った方がトータルの受取金額が増えるからです。

受給権者以外が事業を相続する場合

小規模企業共済の契約者が亡くなった場合の共済金受給権者は「①配偶者 → ②同一生計の子 → ③同一生計の父母 …」といったように順位が決まっており、生命保険のようにあらかじめ受取人を指定することができません。

そこで、たとえば旧契約者の配偶者は存命しているが事業は子どもが承継したようなケースでは、配偶者が共済金を受け取ると2次相続の際の相続税負担が増えてしまうことから、子どもが承継通算により共済契約を継続することでトータルの相続税負担を抑えられる場合があります。

もちろん1次相続の際の相続税は増える可能性がありますが、退職手当金の非課税枠があるためそれほど大きな負担増にはなりません。

このように、承継通算は2次相続対策としても活用できるケースがあるのです。

まとめ

小規模企業共済という制度自体は非常に有名ですが、承継通算については意外と知られていません。

契約者に万が一のことがあった場合には、ぜひ選択肢の一つとして検討してみてください。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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