事業的規模でない不動産所得の収入計上時期。前受・未収経理も可能?

ポイント:原則は「契約による支払日」に収入計上。ただし、複式簿記による記帳を行っている場合には、事業的規模に満たなくても「貸付期間対応」による収入計上が可能。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

不動産の賃貸借契約においては、賃料の支払時期について『当月分の賃料を前月末日までに支払う』よう定められているのが一般的ですが、ここで「いつ時点の収入にすべきか」という問題が生じます。

原則は「契約による支払日」に収入計上しますが、青色申告で65万円の特別控除を受けるために複式簿記による帳簿をつけている場合には「貸付期間対応」させることも可能です。

それでは、65万円控除の要件を満たさない規模の不動産貸付でも「貸付期間対応」による収入計上は可能なのでしょうか?

不動産所得の収入計上時期の原則

不動産の貸付による賃料については、原則として賃貸借契約書に定められている賃料の支払日の属する年分の収入金額にすることとされています。

たとえば『当月分の賃料を前月末日までに支払う』契約の場合、前月末時点で翌月分の収入を計上しなければなりませんので、X1年分の確定申告の際には、

「 X1年2月分 ~ X2年1月分 」

の12ヵ月分を収入に計上することになります。

この場合、もし賃料の入金が前月末までに間に合わなかった(一時的に滞納状態にあった)としても、収入計上する時期はあくまで「契約による支払日」=「前月末」であることに変わりはありません。

「事業的規模」で複式簿記による帳簿を付けている場合

ただし、不動産貸付を事業的規模(いわゆる「5棟10室基準」を満たす規模)で行っている場合で、以下の3つの要件をすべて満たすときは、その年の貸付期間に対応する賃料をその年分の収入金額にすること(貸付期間対応)が認められています。

  1. 不動産賃貸業について帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて不動産所得を計算していること
  2. 不動産貸付による収入の全部について、継続的にその年中の貸付期間に対応する部分の金額をその年分の収入に計上しており、かつ、帳簿上「前受収益」および「未収収益」の経理が行なわれていること
  3. 1年を超える期間にかかる収入がある場合には、その収入について「前受収益」または「未収収益」の明細書を確定申告書に添付していること

これらの要件をすべて満たす場合、上記の例でいえば、

「 X1年1月分 ~ X1年12月分 」

の12ヵ月分を収入に計上することが可能となります(X1年12月末に受け取ったX2年1月分の賃料は「前受収益」として計上)。

「非事業的規模」の場合の収入も貸付期間対応させることは可能?

不動産貸付の規模が「5棟10室基準」に満たない場合には、青色申告の65万円控除の要件を満たさないことから、複式簿記による帳簿を作成するケースは少ないかと思います。

したがって通常は、原則通り「契約による支払日」に収入計上することになります。

ただし、不動産貸付を事業的規模で行っていない場合であっても、上記の要件「1.」及び「2.」のいずれにも該当するときは、1年以内の期間にかかる収入については、その年の貸付期間に対応する賃料をその年分の収入金額にすること(貸付期間対応)が認められています。

つまり、65万円控除の恩恵はないけれど、コツコツと複式簿記による帳簿を付けていれば、賃料収入の「前受・未収経理」はOKということです。

収入計上時期を変更する年の収入金額は11ヵ月分でOK

前年まで複式簿記による帳簿をつけておらず「契約による支払日」ベースで収入計上していたところ、今年から複式簿記による記帳を開始した場合にはどうなるのでしょうか?

たとえば『当月分の賃料を前月末日までに支払う』契約の場合、前年(X0年)の確定申告では

「 X0年2月 ~ X1年1月 」

までの収入を計上しているため、今年(X1年)の確定申告では前年に計上済みの「X1年1月分」を除いた

「 X1年2月 ~ X1年12月 」

までの収入を計上することになります。

この場合、収入計上金額が今年だけ一時的に11ヵ月分になってしまいますが、これは全く問題ありませんのでご安心ください。

まとめ

実務上、複式簿記による記帳を行っていないにもかかわらず「貸付期間対応」ベースで収入計上しているケースが見受けられますが、これは本来アウトです。

もし「前月末払い」契約の場合には、翌年1月分が収入計上漏れの状態になってしまっています。

正しい期間の収入が計上されているかどうか、もう一度前年の確定申告書を見直して確認してみることをお勧めします。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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