税込経理における消費税の経費計上時期の選択。継続適用要件はある?
ポイント:消費税の経費計上時期は「支払った時」と「決算時に未払計上」のどちらでもOK。継続適用要件はないので工夫すれば節税も可能。
こんにちは。税理士の関田です。
消費税の経理処理には「税込経理」と「税抜経理」の2種類の方式がありますが、売上規模がそれほど大きくない個人事業主や法人では「税込経理」方式を採用していることが多いかと思います。
「税込経理」の場合、納付する消費税を『租税公課』として経費に計上することになりますが、その計上のタイミングはいつにすべきでしょうか?
「税込経理」における消費税の経費計上時期
原則
税込経理方式を採用している場合、納付する消費税の計上時期は、原則として「消費税の申告書が提出された日の属する年(事業年度)」とされています。
わかりやすく言い換えるなら、「実際に消費税を支払ったとき」に経費計上するということです。
<仕訳例>
①決算時
処理なし
②翌期(納付時)
借方(租税公課)×××円 / 貸方(現預金)×××円
例外
ただし、例外として「決算時に未払計上した場合はその計上した年(事業年度)の経費に算入する」とされています。
<仕訳例>
①決算時
借方(租税公課)×××円 / 貸方(未払消費税等)×××円
②翌期(納付時)
借方(未払消費税等)×××円 / 貸方(現預金)×××円
継続適用要件はあるか?
上記のように、消費税を支払ったときに計上するか決算時に未払計上するかは任意で選択可能ですが、一度選択した方法は毎年継続しなければいけないのでしょうか?
結論としては、継続適用の要件はありません。
つまり、消費税の経費計上時期は年度ごとに選択できるということです。
たとえば、毎年50万円の消費税の納税が発生する事業者の場合、ある年は未払計上せず(租税公課:0円)、翌年は前年分の消費税を支払時に経費計上したうえでさらにその年分の消費税を未払計上し(租税公課:100万円)、翌々年は未払計上しない(租税公課:0円)ということも認められるわけです。
これは合法的な節税(利益調整)に使えなくもありません。
個人事業主であれば、所得が少ない(=税率が低い)年は未払計上を見送り、所得が多い(=税率が高い)年の経費に回すことで税負担を抑えることができます。
また法人でも、当期は利益がほぼトントンだが翌期は黒字が見込まれるといったケースでは、経費計上のタイミングをずらすことで利益調整を行うことが可能です。
まとめ
「期間損益計算」の観点からいえば、特に法人の場合は事業年度ごとに計上時期を選択することは積極的にお勧めできませんが、技術的には可能ということです。
個人事業主については超過累進税率の影響は大きいですので、年によって所得の増減が激しい場合には消費税の計上時期を工夫してみると良いでしょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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