共有の賃貸不動産とお金の管理。入出金はすべて共有口座に集約しよう
ポイント:共有の賃貸不動産に関するお金の出入りは賃貸専用の共有口座に集約させる。ただし、各共有者の所得税・住民税の支払いを共有口座から行ってはいけない。
こんにちは。税理士の関田です。
賃貸アパートなどを共有している場合で、各共有者間で持分に応じたお金の精算を毎年きちんと行っているケースは意外と稀です。
現実的には、お金は入ってきていないが持分に対応する不動産所得の申告をして税金だけ払っている、という方も結構いるのではないでしょうか?(なかには代表者がすべて自分の不動産所得として申告している例もあったりしますが・・・)
ですが、後々面倒なことにならないよう、共有の賃貸不動産については今からでも賃貸専用口座を作って管理することをお勧めします。
目次
共有の賃貸不動産に関するお金の管理で注意すべきこと
賃貸アパート等を2人以上で共有していたとしても、わざわざ借主が各共有者へその持分に応じた賃料を振り込んでくれるわけではありません(同族の不動産管理法人への賃貸でもない限り)。
経費についても、1つの請求について各共有者が持分で按分した金額をそれぞれ支払う、なんてことは普通はしないでしょう。
だいたい、固定資産税の納税通知書だって代表者1名のみに送付されてくるわけです。
したがって、共有の賃貸不動産に関するお金の”入”と”出”がきちんと管理されていないと共有者間で「債権・債務」が発生してしまい、しかもそれがいくらあるのか正確にわからない、という事態が生じてしまいます。
それが何年、何十年と続いたとすると・・・。
共有口座の運用の仕方
共有の賃貸不動産のお金の管理をきちんと行うためには、賃貸専用の共有口座を作り、賃貸に関するすべての入出金を共有口座へ集約させましょう。
賃料はもちろん共有口座へ入金してもらうようにします。
また経費についても、引落・振込を共有口座から行うだけでなく、現金で支払った場合もすぐにその分のお金を共有口座から引き出して精算しておくことをお勧めします。
また不動産賃貸業では少ないかもしれませんが、クレジットカードで支払う経費がたくさんある場合には賃貸専用のクレジットカードを用意し、共有口座から引き落とすようにしておくと良いでしょう。
なお、共有口座は共有者のうちどなたか代表者1人の名義の口座でもいいですし、屋号(物件名)口座が作れるようであればそれでも構いません。
共有口座を作るメリット
共有口座の作成には、以下のようなメリットがあります。
「手残り」が分かりやすい
収入・支出をひとつの口座に集約させていれば、その共有物件から生じた税引前の収支が一目瞭然となります。
ポイントは、共有物件と関係のない各共有者のプライベートな入出金が絶対に混ざらないようにすることです。
そうすれば、共有口座の残高はいつでもその物件の持分に応じて各共有者に帰属する、という明解な状態を作り出すことができるのです。
共有者のうち1名が代表して入出金の管理していても、プライベート利用口座に混ぜてしまうと分かりにくくなってしまうのでやめましょう。
確定申告が楽になる
収支を共有口座にすべて集約していれば、確定申告に必要な帳簿もその口座だけ記帳すればほぼ完成となります。
あとは、それぞれの持分で按分した金額を基に決算書を作成するだけです。
共有者間で債権債務が生じることもありませんので、青色申告で65万円控除を受けるための貸借対照表を作るのも比較的容易でしょう。
相続税申告も楽になる
共有者の1人が亡くなった場合、きちんと管理された共有口座があれば、相続税申告で計上しなければならない「名義預金」の金額の把握も容易になります。
「名義預金」とは、”形式上”の名義人と”実質的”な所有者が異なる預金のことです。
共有者が亡くなった場合、共有口座があればその残高の一部を相続財産として計上しなければなりませんが、その口座が共有不動産の賃貸のみに使われていたものであれば、面倒な計算はせず単純に「口座残高×共有持分」を計上するだけで済むことになります。
所得税や住民税の支払いは各人の口座から
気を付けていただきたいは、確定申告による所得税や住民税は共有口座から支払ってはいけないということです。
不動産所得に対する税金であれば、その不動産の共有口座から支払っても良いのではないかと思われるかもしれません。
ですが、所得税や住民税は、共有物件による所得以外の所得(年金や給与など)、年齢や家族構成などさまざまな要素の影響を受けるため、たとえ持分が1/2ずつであったとしても所得税・住民税が同額とはなりません。
そこでお勧めしたいのは、毎年決まった時期(たとえば確定申告による納税の前など)に、共有口座の残高の一部を持分に応じて各共有者に分配するという手法です。
所得税・住民税は毎年分配を受けた収入を元に各共有者が自分で支払う、という流れをぜひ習慣づけていただければと思います。
まとめ
ちなみに、共有の賃貸不動産が複数ある場合、物件ごとに口座を作るべきかどうかはケースバイケースです。
持分が異なる場合には、面倒ですがやはり物件ごとに口座を作らなければなりません。
一方、共有者・持分が全く同じ物件であれば一つの口座にまとめてしまっても良いでしょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
当事務所のサービスメニュー・料金について
初回のご面談は無料です(単発の税務相談・コンサルティングを除く)。
オンラインでのビデオ面談もお受けしております。