保管手数料が公表に。自筆証書遺言書の保管制度は令和2年7月10日から

ポイント:自筆証書遺言書の保管手数料は、保管申請時に支払う3,900円のみ。ランニングコストは不要。


こんにちは。税理士の関田です。

全部で3種類ある遺言書(自筆証書・公正証書・秘密証書)のうち、費用がかからず最も手軽に作成できるのが自筆証書遺言書です。

ただ、遺言者の自宅等で保管しなければならないゆえ、紛失や親族による偽造・改竄・破棄といったリスクもあったわけですが、いよいよ令和2年7月10日から、自筆証書遺言書を法務局が保管してくれる制度がスタートします。

保管制度創設が公表されて以降、保管料等がいくらかかるのかは「後日公表」とされていましたが、先日ようやく手数料の詳細が判明しました。

自筆証書遺言書保管制度の手数料

保管申請時

自筆証書遺言書の保管を法務局に申請する際の手数料は1件につき3,900円となります。

手数料は申請時にかかるだけで、その後は定期的に保管料を支払う必要はありません。

閲覧請求時

法務局が保管している遺言書は、遺言者の存命中は本人だけが閲覧することができ、遺言者の死亡後は関係相続人等も閲覧することができます。

閲覧の請求にかかる手数料ですが、原本を閲覧する場合は1回につき1,700円となります。

また、モニターでの閲覧請求(主に原本を預けた法務局以外の法務局での閲覧)の場合は1回につき1,400円です。

証明書交付請求時

相続発生後は、関係相続人等だけでなく誰でも、自らに関係する遺言書が保管されているかどうかを証明した「遺言書保管事実証明書」の交付を請求できます(もし関係する遺言書が保管されていない場合でも ”保管されていない” 旨の証明書が発行されます)が、その際の手数料は1通につき800円となります。

また、遺言者の死亡後、関係相続人等は遺言書のスキャン画像等が記載された「遺言書情報証明書」の交付を請求できますが、その際の手数料は1通につき1,400円です。

撤回・変更時

遺言者が保管を申請した遺言書を撤回する場合および変更する場合には、手数料はかかりません

保管制度を利用するメリット

前述のとおり手数料はそれほど高いものではなく、また保管制度には以下のようなメリットもありますので、自筆により遺言書をのこされたい方は是非利用してみると良いでしょう。

紛失、偽造等の防止

自宅等に保管することによる紛失リスクや、親族による偽造・改竄・破棄などのリスクを避けることができます。

様式不備による無効の防止

保管申請時に遺言書の様式が正しいかどうかを法務局がチェックしてくれますので、様式不備により無効になる恐れがなくなります。

検認手続きが不要

自宅等で保管されている遺言書は開封前に家庭裁判所で検認してもらう必要がありますが、法務局で保管されている遺言書は検認手続きが不要となります。

まとめ

所定の手数料さえ支払えば従来の自筆証書遺言のデメリットの多くが解消されるように思える「自筆証書遺言書保管制度」ですが、遺言書が保管されていることを相続人が知らない場合、遺言書の存在が気づかれないまま遺産分割手続きが進んでしまう恐れがあります。

そうならないためには、生前に相続人等に対して「遺言書を法務局に保管している」旨を伝えておく、もしくはエンディングノートなどにメモを残しておくことが必要になるでしょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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