個人事業主がパソコン・スマホを下取りに。所得区分と経理方法は?

ポイント:少額な業務用資産の下取りは、購入金額・購入時の経理処理によって「事業所得」になるケースと「譲渡所得」になるケースに分かれる。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

パソコンやスマートフォンを頻繁に買い替える方であれば、古いものを下取りに出すことも多いでしょう。

比較的新しいものであればそれなりの値段も付きます。

プライベート利用であれば気にする必要はありませんが、個人事業主が仕事で使っていたものを下取りに出した場合には税金上の取り扱いに注意が必要です。

プライベート利用のPC・スマホの下取りは課税されない

動産(モノ)を売却した場合、税務上は総合課税の「譲渡所得」として取り扱いますが、”生活用動産”の譲渡については課税しないこととされています。

たとえば、自家用車の買い替えの際、旧車に下取価格がついたとしても確定申告はしませんよね?

プライベートで使用していたパソコンやスマートフォンについても”生活用動産”にあたりますので、下取りに出したとしても課税されることはありません。

業務用のPC・スマホの下取りは課税される

一方、個人事業主が仕事に使っていたパソコンやスマートフォンを下取りに出した場合はどうでしょう?

業務用であれば、購入代金は経費にしているはずですから、売却代金(下取価格)は収入にしなければつじつまが合いません。

ただし、「収入にする」とひと口に言っても、その税務上の取り扱いは、購入時に

  • いくらで買ったのか?
  • 経理上どのように処理したのか?

によって異なるのです。

次の4つのうちどのケースに当てはまるのかを確認し、正しい経理処理・申告を行うようにしましょう。

業務用PC・スマホを下取りに出した場合の所得区分・経理処理

①10万円未満で購入し経費処理していた場合

所得区分

10万円未満で購入した場合には、購入時に全額を『消耗品費』などで経費計上しているかと思います。

この場合、下取価格は「事業所得」の収入となります(不動産賃貸業であれば「不動産所得」)。

経理処理

(例)9万円で購入したパソコンを3万円で下取りに出した場合

借方 金額 貸方 金額
現金・預金 30,000 雑収入 30,000

 

②10万円以上20万円未満で購入し一括償却資産としていた場合

所得区分

10万円以上20万円未満で購入した場合には、『一括償却資産』として3年間での均等償却を選択することができます。

この場合、下取価格は「事業所得」の収入となります(不動産賃貸業であれば「不動産所得」)。

経理処理

(例)15万円で購入し『一括償却資産』として処理したパソコンを5万円で下取りに出した場合

借方 金額 貸方 金額
現金・預金 50,000 雑収入 50,000

 

※ 3年間の均等償却中の下取りでまだ簿価が残っていても償却はそのまま継続します。

③10万円以上30万円未満で購入し少額減価償却資産の特例を使っていた場合

所得区分

10万円以上30万円未満で購入した場合には、青色申告者に限り『少額減価償却資産』の特例により全額経費計上を選択することができます。

この場合、下取価格は「譲渡所得」の収入となります。

なお、総合課税の「譲渡所得」には50万円の特別控除がありますので、その年ほかに譲渡所得がない限り所得税がかかることはないでしょう。

経理処理

(例)25万円で購入し『少額減価償却資産』の特例を使ったパソコンを8万円で下取りに出した場合

借方 金額 貸方 金額
現金・預金 80,000 事業主借 80,000

 

「事業所得」の経理上は収入になりませんので『事業主借』で処理します。

④10万円以上で購入し通常の固定資産として減価償却していた場合

所得区分

購入時に上記②や③の処理を行うかどうかは任意ですので、10万円以上の資産であれば普通に『工具器具備品』として法定耐用年数で減価償却することもできます。

この場合、下取価格は「譲渡所得」の収入となります。

経理処理

(例)25万円で購入し『工具器具備品』として減価償却していたパソコン(未償却残高125,000円)を8万円で下取りに出した場合

借方 金額 貸方 金額
現金・預金 80,000 工具器具備品 125,000
事業主貸 45,000    

 

売却損が出たとしても「事業所得」の経理上は経費になりませんので『事業主貸』で処理します。ただし、総合課税の譲渡所得の損失となるため、事業所得等との損益通算を行うことはできます。

課税事業者の場合は消費税の取り扱いにも注意

事業用の資産を売却した場合、その売却代金は消費税の課税売上となります。

仕事に使っているパソコンやスマートフォンの下取りもこれに当たりますので、下取価格を課税売上として処理するのを忘れないようにしましょう(特に「譲渡所得」となる場合は注意)。

なお、簡易課税を選択している事業者の場合、固定資産の譲渡は「第4種事業」にあたります。

まとめ

パソコンやスマートフォンに限らず、業務用資産の下取りについては処理がうやむやになっていることも結構あるのではないでしょうか?

先に挙げた事例は下取代金をそのまま受領するシンプルなケースですが、買い替えの場合には購入代金の一部に充当されていることもあります。

「下取り」と「購入」は別々の取引であることを意識して、正しい処理を心がけましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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