固定資産税は月割して経費計上?年の途中で賃貸を開始・終了した場合
ポイント:固定資産税は賃貸期間に応じた月割計算を行わない。賃貸期間中に「納税通知日」、「納期開始日」または「納付日」が到来した分を必要経費として計上。
こんにちは。税理士の関田です。
年の途中で不動産賃貸を開始あるいは終了した場合、建物などの減価償却費については月割計算を行い、賃貸期間分のみを計上します。
では、固定資産税についても同じように月割で按分計算し、賃貸期間分のみを必要経費として計上することになるのでしょうか?
目次
固定資産税の必要経費算入時期
所得税上、固定資産税を必要経費に計上するタイミングは次の3つの中から選択することができます。
①納付額の確定日(納税通知書が交付された日)
②分割された納期のそれぞれの開始日
③実際に納付した日
⇒ 過去ブログ 『固定資産税を経費計上する時期。法人・個人それぞれの場合を解説』
賃貸期間に応じた按分計算は行わない
年の途中で賃貸を開始あるいは終了した場合でも、固定資産税を賃貸期間に応じ月割計算して経費に計上することはありません。
賃貸期間中に上記①~③に掲げる日が到来していれば、それぞれ選択した方法により、
- ①の日に年税額を経費計上
- ②の日に分納税額を経費計上
- ③の日に納付税額を経費計上
することができます。
少々わかりにくいので、事例を使って解説します。
事例で解説
<前提条件>
①納税通知書の交付日 … 5月10日
②分割された納期の開始日 … 第1期:5月10日、第2期:7月10日、第3期:11月10日、第4期:2月10日
③実際の納付日 … 第1期:5月31日、第2期:7月31日、第3期:11月30日、第4期:2月28日
4月から賃貸を開始した場合
転勤などの事情により転居し、それまで住んでいた自宅を4月1日から賃貸したとします。
この場合、①の方法を採用すれば、5月10日時点ですでに賃貸を開始していますので、固定資産税の全額をその年の必要経費に計上することが可能です。
また、②または③の方法を採用した場合には、
- 第1期~第3期分をその年の必要経費に計上
- 第4期分を翌年の必要経費に計上
することになります。
10月から賃貸を開始した場合
上記と同じようなケースで、それまで住んでいた自宅を10月1日から賃貸したとします。
この場合、もし①の方法を採用すると、5月10日時点ではまだ賃貸を開始していないため、その年の固定資産税の全額が必要経費に計上できないことになります。
しかし、②または③の方法を採用した場合には、10月1日以降に納期開始日又は納付日が到来する分として、
- 第3期分をその年の必要経費に計上
- 第4期分を翌年の必要経費に計上
することが可能です。
3月で賃貸を終了した場合
今度は逆に、転勤期間中に自宅を賃貸しており、転勤が終わって自宅へ戻るため3月31日で賃貸を終了したケースを考えます。
この場合、賃貸期間である1月1日~3月31日において①・②・③いずれの日も到来していないことから、その年の固定資産税の全額が必要経費に計上できないことになります。
9月で賃貸を終了した場合
上記と同じようなケースで、9月30日で賃貸を終了した場合はどうでしょう。
この場合、①の方法を採用すれば、5月10日時点で賃貸を行っていますので、固定資産税の全額をその年の必要経費に計上することが可能です。
②または③の方法によれば、第1期と第2期分のみを計上することになりますが、あえてこの方法を採用するメリットはありません。
相続税の債務控除と混同しないよう注意
今回ご説明した考え方は、賃貸用不動産の相続があった年における「被相続人」の準確定申告、「相続人」の確定申告での固定資産税の経費計上の仕方にも応用することができます。
ところで、相続税の計算上、亡くなった日時点で未払の固定資産税は債務控除(財産からマイナス)することができますが、亡くなった日までに納税通知書が届いていない場合でも、その年の固定資産税の全額を債務控除することができます。
固定資産税はその年1月1日時点での所有者に納税義務があるため、たとえ1月1日に亡くなったとしても、その年の固定資産税はすべて被相続人の債務となるのです。
所得税と相続税で取り扱いが異なる部分ですので注意が必要です。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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